1969年公開。ハマープロ制作ドラキュラ映画のシリーズ五作目。前作のラストでドラキュラ伯爵が滅びるシーンにたまたま商人が居合わせた（どこにいたんだ！？）という強引な展開から物語はスタート。いろいろあってドラキュラ伯爵が復活するのですが、殺されてしまった崇拝者の復讐を始めるという展開も変だし、自分の手を下さないで、犯人の子供たちをわざわざ操って、それぞれの父親を殺させるというのも何だかまわりくどい展開。実はこの映画、当初はドラキュラのシリーズ物ではなかったものの、アメリカの配給会社（ワーナー）の要請でクリストファー・リーのドラキュラを登場させることになったのだとか。当初のシナリオがどんなものだったかは知らないですが、そんな前提で考えるとおかしな展開の数々も合点がいきます。呪いの対象になった犠牲者たちがそれぞれの子供に殺されるというのが本来のストーリーだったようでして、ちょっと早すぎたオカルト映画だったとでもいえばよろしいでしょうか。ヒロインのアリスや親友のルーシーが、笑顔で父親を殺害するシーンの絵面がけっこう強烈であります。ヒロインのアリスを演じるリンダ・ヘイドンはぽっちゃり体形に愛嬌のある丸顔で、当時のハマー映画では他に見当たらないタイプ。これからアリスを襲おうとする時の、「俺、デブ専じゃないのに……」といいたげなクリストファー・リーの困り顔が何だか印象的です。今回、ドラキュラと対決することになるのはアリスの恋人のポールでして、絵に描いたような好青年で美男子で非の打ちどころがないのですが、これだけ美形なのにデブ専なのか。コンセプトは決して悪くなかったものの、もともと関係がなかったドラキュラを黒幕にしたせいで全体に木に竹を接いだような印象がついてまわるのですが、そんな本作の一番の難点はドラキュラの滅び方。いままでもあの手この手で退治されてきたドラキュラですが、本作は高いところから落ちて墜落死？　吸血鬼がそれだけで滅んじゃうの？いったい、どうしてドラキュラが滅んだのか、さっぱり分からない結末でした。